日報作成の時間を半分にする“AI自動要約”の力
毎日の業務報告(日報)を作るのに、15〜30分かかっていませんか?
忙しいビジネスパーソンやチームリーダーにとって、日報作成は必要不可欠とはいえ、**「書くのが面倒」「読むのも大変」**という悩みの種です。
しかし最近では、**ChatGPTとGoogle Apps Script(GAS)**を組み合わせることで、
Googleスプレッドシートに入力した内容を自動で要約し、Slackやメールに送信する仕組みが簡単に作れるようになっています。
この記事では、ノーコード・ローコードで実現できる「ChatGPT×GAS日報自動要約スクリプト」を、
実際のコード付きでわかりやすく解説します。
チーム共有・個人の振り返り・業務効率化のすべてに役立つ内容です。
日報業務が抱える3つの非効率
「日報を自動化したい」と考える人が増えている背景には、次のような課題があります。
1. 書くのに時間がかかる
- 毎日フォーマットを開いて書くのが手間
- 思い出しながら文章を整理するのに時間がかかる
- 書いても上司に見てもらえないことも多い
2. 内容が伝わりにくい
- 文章の長さや書き方が人によってバラバラ
- 要点が抜けていて、読んでも全体がつかめない
- 上司側も複数人分を読むのが負担
3. 活用されず“書きっぱなし”になる
- 日報を分析・集計する時間がない
- 改善に活かせず、モチベーションが下がる
こうした問題の多くは、「人が書く」「人が読む」という前提にあるために発生しています。
ここにAIを組み合わせることで、「書く→要約→共有」まで自動化できるのです。
ChatGPTとGASの連携で何ができるのか?
ChatGPT(OpenAI API)とGAS(Google Apps Script)を連携させることで、
スプレッドシートやGoogleフォームなどのデータを自動で文章に変換・要約できます。
ChatGPT×GASの連携でできること
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 自動要約 | 日報本文から要点を抽出して短くまとめる |
| 感情分析 | ポジティブ/ネガティブの傾向を自動判定 |
| Slack通知 | チームのSlackチャンネルに自動投稿 |
| メール送信 | 要約結果を管理者に自動メール送信 |
| 自動保存 | 要約結果をスプレッドシートに追記 |
つまり、日報を「入力」するだけで、AIが整理・共有してくれる仕組みを作れるのです。
なぜGASを使うのか?
ChatGPTを利用するだけなら、Pythonや他の自動化ツールもあります。
しかしGASを使うことで、次のような利点があります。
✅ メリット一覧
- Googleアカウントさえあれば無料で使える
- スプレッドシートとの親和性が高い
- トリガー設定で自動実行が簡単
- 導入コストがゼロ
特に中小企業・個人事業主にとっては、「インストール不要・サーバー不要」で始められるGASは非常に相性が良いツールです。
ChatGPT APIとの連携に必要な準備
スクリプトを書く前に、最低限以下の設定を行っておきましょう。
準備リスト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| OpenAIアカウント | ChatGPT APIを利用するためのアカウントを作成 |
| APIキー | OpenAI公式サイトから発行(秘密に管理) |
| Googleスプレッドシート | 日報データを入力するシートを作成 |
| Google Apps Script | スプレッドシートの拡張機能として開く |
これで環境準備は完了です。
ここから、実際に「ChatGPT×GAS」で日報を自動要約するコードを作っていきます。
ChatGPT×GAS日報要約スクリプトの全体像
今回のスクリプトの流れは以下のようになります。
① スプレッドシートに日報を入力
② GASがChatGPT APIを呼び出す
③ ChatGPTが要約文を生成
④ 結果をスプレッドシートに書き込み
⑤ Slackやメールで共有
この構成で、毎日の業務報告を自動化します。
ChatGPTに要約を依頼するスクリプト(コード付き)
以下は、実際に使えるGASスクリプトの例です。
// OpenAI APIを呼び出して日報を要約する関数
function summarizeDailyReport() {
const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName('日報');
const lastRow = sheet.getLastRow();
const reportText = sheet.getRange(lastRow, 2).getValue(); // B列に日報本文
const apiKey = 'YOUR_OPENAI_API_KEY';
const url = 'https://api.openai.com/v1/chat/completions';
const prompt = `
以下は本日の業務日報です。重要な成果・課題・次の行動を含めて200文字以内で要約してください。
日報内容: ${reportText}
`;
const payload = {
model: 'gpt-4o-mini',
messages: [{ role: 'user', content: prompt }],
temperature: 0.3,
};
const options = {
method: 'post',
contentType: 'application/json',
headers: { Authorization: 'Bearer ' + apiKey },
payload: JSON.stringify(payload),
};
const response = UrlFetchApp.fetch(url, options);
const result = JSON.parse(response.getContentText());
const summary = result.choices[0].message.content;
// 要約結果をC列に書き込み
sheet.getRange(lastRow, 3).setValue(summary);
}
このコードをGASに貼り付けて実行するだけで、
スプレッドシートの「B列」に入力した日報をChatGPTが自動要約し、「C列」に結果を出力します。
コードのポイント解説
このスクリプトで特に理解しておくべき重要ポイントは3つあります。
① API呼び出し構文
UrlFetchApp.fetch(url, options);
この部分がOpenAIサーバーと通信する箇所です。payload で送信内容を指定し、response にAIからの結果を受け取ります。
② ChatGPTへのプロンプト
以下は本日の業務日報です。重要な成果・課題・次の行動を含めて200文字以内で要約してください。
この部分を調整することで、「短め」「長め」「要点強調」など、要約のトーンを変えられます。
③ 出力の書き込み
sheet.getRange(lastRow, 3).setValue(summary);
スプレッドシート上に要約を自動書き込み。
将来的にSlack送信やメール通知にも応用できます。
APIコストと実行制限
ChatGPT APIの利用には少額の費用が発生しますが、日報要約程度なら非常に安価です。
| モデル | 単価(1,000トークンあたり) | 日報要約の目安 |
|---|---|---|
| gpt-4o-mini | 約$0.15 | 1日1円以下 |
| gpt-4o | 約$0.50 | 高精度モデル向け |
| gpt-3.5-turbo | 約$0.10 | 低コスト・高速 |
1人分の要約なら、月数十円レベルで運用できます。
Slack通知との連携でチーム共有を自動化する
日報の要約を自動化できたら、次のステップはSlackなどへの自動共有です。
ChatGPTが生成した要約文をそのままSlackチャンネルに流すことで、チーム全体が即座に情報を把握できます。
GASでSlackへメッセージを送るコード例
function sendToSlack(summaryText) {
const webhookUrl = 'YOUR_SLACK_WEBHOOK_URL';
const payload = {
text: `🗓 本日の日報要約\n${summaryText}\n\n#ChatGPT自動要約`,
};
const options = {
method: 'post',
contentType: 'application/json',
payload: JSON.stringify(payload),
};
UrlFetchApp.fetch(webhookUrl, options);
}
スクリプト統合例
上記のSlack通知関数を、先ほどのsummarizeDailyReport()の最後に追記します。
// ChatGPTから要約を取得した後にSlackへ送信
sendToSlack(summary);
これで、スプレッドシートに日報を入力 → ChatGPTが要約 → Slack通知という完全自動フローが完成します。
上司やメンバーがリアルタイムに内容を確認できるため、報連相が格段にスムーズになります。
Googleフォーム連携で「書く」手間をさらに削減
さらに効率化したい場合は、Googleフォームを組み合わせるのがおすすめです。
フォーム+スプレッドシート+ChatGPTの構成
1️⃣ Googleフォームで日報を入力(例:今日の業務内容・課題・明日の予定)
2️⃣ 自動的にスプレッドシートに転記
3️⃣ GASがトリガーで実行し、ChatGPTが要約
4️⃣ Slackに要約通知
メリット
- 書く場所を統一できる
- スマホからでも入力できる
- フォーマット統一で精度が安定
フォーム送信をトリガーにスクリプトを実行するには、GASの「トリガー設定」で
**「フォーム送信時に実行」**を選ぶだけです。
ChatGPTに“読みやすい要約”をさせるコツ
同じコードでも、プロンプト(指示文)の書き方で出力の質は大きく変わります。
以下の工夫で、ビジネスに使える精度の高い要約が得られます。
🔹プロンプト設計のコツ
- 「箇条書きで要約して」と指定する
- 「成果・課題・次の行動」の3項目に分類させる
- 「上司に報告する文章として自然に」と指示する
例文
次の内容を、上司に報告するビジネス日報として自然な文章にまとめてください。
成果・課題・次の行動の3項目に分け、全体で300文字以内に収めてください。
🔹出力の安定化
ChatGPTの応答は確率的に変動しますが、temperatureパラメータを0.2〜0.3程度に設定すると、
ブレの少ない安定した要約を得られます。
実務での活用例
① 会計事務所・コンサル業務での活用
顧客ごとの作業報告や面談記録をスプレッドシートに記入 → ChatGPTが要約してSlackに共有。
上司は全体の動向を短時間で把握でき、顧客対応の改善にもつながります。
② フリーランス・個人事業主の日報管理
日々のタスクログをまとめて要約することで、毎週の振り返りや経営分析に活用可能。
AIが自動で文章を生成するため、習慣化が容易になります。
③ チーム開発・スタートアップ
エンジニアやデザイナーが日々の進捗をフォーム入力 → ChatGPTが要約 → Slack共有。
会議時間を短縮し、チーム全体の可視化を促進します。
よくあるエラーと対処法
スクリプト実行時にトラブルが発生した場合、以下のチェックリストを参考にしてください。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| エラー「Exception: Request failed」 | APIキーの設定ミス | OpenAIダッシュボードで再発行 |
| 文字化け | エンコード不一致 | UTF-8を指定・特殊文字を除去 |
| 要約が途中で切れる | トークン数制限 | max_tokensを増やす |
| Slack通知が届かない | Webhook URL誤り | Slack管理画面で再取得 |
| GASが動かない | トリガー未設定 | 「スクリプトのトリガー」で確認 |
セキュリティ・個人情報の注意点
ChatGPT APIを扱う際は、業務情報の取り扱いに注意が必要です。
- 機密データ(顧客情報・社内情報)は送信しない
- APIキーは公開しない(共有スクリプトには含めない)
- OpenAIのデータ使用ポリシーを確認する
また、必要に応じて「匿名化」「要約後削除」などのルールを組み込むと安全です。
自動化がもたらす本質的な価値
このスクリプトの価値は単なる「時間短縮」ではありません。
ChatGPTの導入によって、次のような変化が起こります。
- 情報が整う:日報の品質が均一化され、読みやすくなる
- 振り返りやすくなる:定量的・定性的な傾向を簡単に分析できる
- チームがつながる:Slack通知により共有が自然に定着する
つまり、AIによる日報要約は「チームの知的生産性」を底上げする仕組みなのです。
導入ステップまとめ
初心者向けステップ一覧
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① OpenAIアカウント作成 | APIキーを発行 |
| ② Googleスプレッドシート作成 | 「日報」「要約」カラムを準備 |
| ③ GASスクリプトを貼り付け | コードを入力し保存 |
| ④ テスト実行 | 動作確認と出力確認 |
| ⑤ トリガー設定 | 自動化スケジュールを設定 |
| ⑥ Slack通知を追加 | 共有フローを構築 |
| ⑦ 改良・最適化 | プロンプト調整・出力安定化 |
1日で導入可能なレベルなので、業務改善の第一歩として最適です。
今後の拡張アイデア
ChatGPT×GASの組み合わせは拡張性が高く、以下のような応用も可能です。
- ChatGPT要約+スプレッドシートのグラフ化
- 感情分析スコアの可視化
- ChatGPT要約をGoogleドキュメントに自動追記
- 毎週自動で「週報」を作成しメール送信
GASトリガーとChatGPT APIを組み合わせることで、「報告」「整理」「共有」を自動化でき、
AIがチームの“補助人材”として機能するようになります。
まとめ
ChatGPTとGASを組み合わせれば、日報の作成・要約・共有までを完全に自動化できます。
数十行のコードで導入でき、コストもほぼゼロ。
さらに、Slack通知やフォーム連携などを加えれば、チーム全体の生産性が向上します。
AIの力を活かして、「書く手間を減らし、考える時間を増やす」仕組みを今すぐ始めましょう。

