入金管理を自動化すれば、請求業務は“ほぼノータッチ”になる
請求書の発行・送付・入金確認。
この一連の業務は、ビジネスを続けるうえで避けられないものですが、同時に最も手間がかかる作業のひとつでもあります。
「freeeで請求書を作成して、Stripeで決済リンクを発行し、入金があったら会計データを更新する」──
この流れを毎回手作業でやっていると、少しずつ時間が奪われていきます。
実はこのプロセス、Zapier(ザピアー)を使うことでほぼ完全自動化が可能です。
Stripeの支払い情報をトリガーに、freeeの入金処理を自動で反映。
顧客にも自動で領収書メールを送る仕組みを作れば、請求〜入金確認のサイクルが“人の手を介さず回り続ける”ようになります。
この記事では、「Stripe×freee×Zapier」の連携による請求・入金自動化の全体像と実装ステップを、初心者でも理解できるように解説します。
手作業の請求・入金処理にはこんな無駄がある
バックオフィス業務の中でも「請求・入金確認」は特に属人化しやすく、次のような非効率が発生しがちです。
| 作業内容 | 現状の課題 | 結果的なロス |
|---|---|---|
| freeeで請求書を発行 | 顧客ごとに日付・金額・備考を入力 | 作業時間が累積 |
| Stripeで支払い受付 | 手動でリンク作成・送付 | 入金漏れ・転記ミスのリスク |
| 入金確認 | 銀行明細と照合 | 月末のチェックに時間がかかる |
| 会計処理 | freeeに手動で入金登録 | 二重入力・遅延反映の恐れ |
このような“手動ループ”が続くと、事務コストが増えるだけでなく、
キャッシュフローの可視化が遅れ、経営判断に影響を及ぼします。
特に小規模事業者やフリーランスの場合、
請求書を出すのは簡単でも「入金確認の抜け漏れ」が多く、信頼に関わるトラブルに発展するケースも少なくありません。
3つのツールを組み合わせるだけで、請求→入金→反映が全自動に
「Stripe」「freee」「Zapier」にはそれぞれの得意分野があります。
これらをうまく組み合わせると、業務の流れをシームレスに自動化できます。
| ツール | 役割 | 主な処理 |
|---|---|---|
| Stripe | 決済処理の自動化 | 顧客への支払い受付、領収書メールの自動送信 |
| freee会計 | 請求・入金・帳簿管理 | 請求書作成、入金データ反映 |
| Zapier | 各ツール間の自動連携 | Stripeの入金イベントをfreeeへ転送 |
この3つを連携させることで、
「請求が発行された→顧客が支払った→入金をfreeeに反映→Slackへ通知」
という一連の流れが人の手を介さずに処理されるようになります。
自動化の全体像を理解する
まずは、Zapierを使った自動化フローの全体像を見てみましょう。
1️⃣ freeeで請求書を作成(顧客名・金額・支払期日)
↓
2️⃣ Zapierがfreee請求データを取得し、Stripeに支払いリンクを自動生成
↓
3️⃣ 顧客がStripeで支払いを完了
↓
4️⃣ Stripeの支払い完了イベントをトリガーに、Zapierがfreeeに入金データを反映
↓
5️⃣ Slackまたはメールで「入金完了」を通知
このように、freee・Stripe・Zapierの3つがそれぞれ「請求」「決済」「連携」という役割を分担し、
完全自動の決済フローを構築します。
Zapierが果たす“接着剤”としての役割
Zapierはノーコードの自動化プラットフォームで、異なるアプリ同士を連携させる“橋渡し役”を担います。
StripeとfreeeにはAPIが用意されていますが、直接つなぐにはプログラミング知識が必要です。
Zapierを使えば、コードを書かずに以下のような処理を設定できます。
- Stripeの支払いイベントをトリガーにZapを起動
- freeeの「入金登録」APIを自動実行
- SlackやGmailにアラートを送信
- Googleスプレッドシートにログを残す
このZapierの「トリガーとアクション」の考え方を使えば、
誰でも**“止まらないバックオフィス”**を構築できます。
freeeとStripeを連携させるための準備
① Stripeアカウントの準備
- APIキーを取得(「開発者」→「APIキー」)
- 顧客データ・商品データを事前登録
- 支払いリンクを発行できる状態にしておく
② freeeのAPI連携を有効化
- freeeの「設定」→「アプリ連携」からZapier連携を有効化
- OAuth認証を通してZapierからアクセス可能にする
- freeeの「取引」や「請求書」への書き込み権限を付与
③ Zapierでアカウントを接続
Zapierの「My Apps」からStripeとfreeeのアカウントを接続します。
この時点で、両サービス間の通信が可能になります。
Stripeのトリガー設定(Zapier側)
Zapierで「新しい支払いイベント」を検出するよう設定します。
- Trigger App:Stripe
- Trigger Event:New Payment (成功時)
- テスト実行:Stripeのテスト支払いで確認
- 取得データ:顧客名、金額、支払いID、支払い日
ZapierはWebhookのようにリアルタイムでStripeのイベントを取得できるため、
支払い完了後、数秒以内に次のアクションへ進めます。
freeeで入金を登録する(Zapierアクション)
Stripeから送られてきた支払い情報をもとに、freeeで入金処理を自動登録します。
- Action App:freee
- Action Event:Create Transaction (入金登録)
- マッピング項目:
- 顧客名 → freee顧客データ
- 金額 → Stripe支払い額
- 日付 → 支払い日
- メモ欄 → Stripe支払いID
Zapierがこのアクションを実行すると、freeeの取引一覧に入金が自動反映されます。
さらに、「未入金リスト」も自動で更新され、請求・回収のステータスがリアルタイムに可視化されます。
Slack通知を組み合わせて“気づける自動化”に
入金処理が自動化されても、「誰がいつ支払ったか」を確認するために
いちいちfreeeを開くのは面倒です。
そこで便利なのが、Slack連携です。
Zapierの最後に「Send Message to Slack」アクションを追加すると、
入金完了時にSlackチャンネルへ自動通知できます。
通知テンプレート例:
💰【入金確認】
顧客:{{顧客名}}
金額:{{金額}}円
支払い日時:{{日付}}
支払い方法:Stripe
Slack通知によって、担当者全員がリアルタイムに入金状況を把握でき、
営業・経理間のコミュニケーションもスムーズになります。
Googleスプレッドシートで入金ログを自動記録する
入金処理が自動化されると、「あとで一覧で確認したい」「月ごとの入金状況を可視化したい」というニーズが出てきます。
このときに便利なのが、Zapier×Googleスプレッドシート連携です。
スプレッドシート連携の設定例
Zapierに次のアクションを追加します。
- Action App:Google Sheets
- Action Event:Create Spreadsheet Row
- 項目マッピング:
- 顧客名(Stripe)
- 金額(Stripe)
- 支払い日(Stripe)
- 入金登録日時(Zapier)
- freee登録ステータス(自動反映)
これにより、すべての入金情報がスプレッドシートに自動蓄積されます。
日次・月次での入金額集計、未入金確認、担当者別の入金分析などが簡単に行えます。
自動化を安定稼働させる「エラー処理」の考え方
自動化は便利ですが、一度止まると気づかないまま数日経っていたというトラブルもよくあります。
特にStripeやfreeeはAPI制限や認証期限切れなどの要因で、一時的なエラーが発生することがあります。
よくあるエラーと原因
| エラー内容 | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|
| freee側に登録できない | 顧客名が一致しない | 顧客IDをマスター化し、スプレッドシートで照合 |
| Zapier実行が止まる | API認証切れ | 90日ごとに再認証、定期確認タスクを設定 |
| Stripeデータが欠落 | Webhook遅延 | Zapier側でリトライ設定(最大3回)を有効化 |
| 入金重複登録 | 同じZapが二重実行 | 一意の支払いIDで重複チェックを追加 |
Zapierには「Paths(条件分岐)」や「Filter(条件フィルタ)」を組み合わせることで、
不整合が起きた際にSlack通知を送る仕組みも作れます。
例:
「freee登録エラーが発生した場合 → Slackの #経理-alert に通知」
こうしておくことで、自動化が止まったときでも即座に気づけます。
定期課金モデルでも使えるStripe×Zapier連携
Stripeは単発請求だけでなく、**定期課金(サブスクリプション)**にも対応しています。
Zapierでは、Stripeの「New Subscription Payment」トリガーを使うことで、
毎月のサブスク入金も自動的にfreeeに登録できます。
サブスク入金自動化の流れ
- Stripeでサブスクリプションプランを作成(例:月額10,000円)
- 顧客が登録 → Stripeが毎月自動課金
- Zapierが支払いイベントを受信
- freeeに入金登録+スプレッドシートに記録
- Slackに「今月の定期入金完了」通知
これにより、オンライン講座や顧問契約など、毎月同額の請求を自動処理できます。
さらに、Zapierの「Delay(遅延実行)」機能を使えば、請求書発行→決済→領収書送付までのタイミングも柔軟に制御可能です。
チームでの運用を想定した「見える化」設計
自動化が進むと、「誰が、いつ、どの取引を確認したか」が見えにくくなります。
チーム運用では、透明性と責任分担の明確化が欠かせません。
そのために以下のような“見える化設計”を取り入れましょう。
| 目的 | 実装例 | 使用ツール |
|---|---|---|
| 入金通知の共有 | Slackの #入金報告 チャンネル | Zapier(Slack通知) |
| 状況把握 | Googleスプレッドシートのステータス列(入金済/エラー) | Google Sheets |
| タスク管理 | 入金確認タスクを自動作成 | Notion / ClickUp / Trello |
| 顧客別分析 | 顧客名+取引回数を自動集計 | Google Data Studio |
これにより、担当者間での情報格差がなくなり、
経理担当が不在でもリアルタイムで入金状況を共有できます。
セキュリティと税務上の注意点
自動化の導入にあたっては、セキュリティと会計上の整合性にも注意が必要です。
セキュリティ面
- APIキーやWebhook URLは共有せず、Zapierの接続画面から安全に認証
- freee・Stripeの両方で2段階認証を有効にする
- Slack通知には金額・顧客情報を最小限に留める
税務・会計面
- freeeに自動登録された取引は**「取引日」「勘定科目」**を必ず確認
- 自動登録ルールにより、入金が誤って別科目(例:雑収入)に計上される場合がある
- 請求書番号・Stripe支払いIDをfreeeの備考欄に残すことで、監査対応が容易に
これらを設定しておくことで、税務署・会計監査対応もスムーズになります。
導入手順まとめ:Stripe×freee×Zapierによる自動化レシピ
最後に、今回紹介した自動化の全体構成を手順化してまとめます。
| 手順 | 内容 | ツール |
|---|---|---|
| ① | freeeで請求書を発行 | freee会計 |
| ② | Stripeで支払いリンクを発行(Zapier経由可) | Stripe |
| ③ | 顧客が支払いを実行 | Stripe決済画面 |
| ④ | Zapierが支払いイベントを検出 | Zapier |
| ⑤ | freeeに入金登録 | Zapier + freee API |
| ⑥ | Slackで入金通知 | Zapier + Slack |
| ⑦ | Googleスプレッドシートにログ保存 | Zapier + Google Sheets |
| ⑧ | 定期課金・チーム共有・AI要約など拡張 | ChatGPT / Make / Data Studio |
これらを一度構築すれば、請求〜入金〜反映〜共有までが完全自動で循環します。
freeeの経理データは常に最新状態を維持でき、キャッシュフローの見える化もリアルタイムに進化します。
応用:Make(Integromat)やChatGPTとの組み合わせも可能
もしZapierの利用制限(無料プラン制限など)が気になる場合、
Make(旧Integromat)を使えばより柔軟なルール設計が可能です。
さらに、ChatGPT APIと組み合わせることで、以下のような“AI経理自動化”も実現できます。
- 入金通知をAIが自動で要約(「どの顧客から、どの期間分の入金か」)
- エラー発生時にAIがSlackで解説
- 月次レポートを自動生成し、経営者にメール送信
これらを取り入れると、「自動で動くだけでなく、自分で考えて報告してくれる」自律型バックオフィスが完成します。
まとめ:請求・入金業務の自動化が“経営のスピード”を変える
Stripe×freee×Zapierを組み合わせた自動化は、単なる作業効率化に留まりません。
経営判断のスピード、顧客対応の迅速さ、キャッシュフローの安定性をすべて向上させます。
| 自動化前 | 自動化後 |
|---|---|
| 手動で入金確認、漏れが発生 | 支払い完了と同時に入金登録+通知 |
| 会計処理が遅れ、資金繰りが見えない | freeeで即時反映し、最新残高を可視化 |
| チーム内で情報共有に遅れ | Slackでリアルタイム共有、誰でも状況把握可能 |
「お金の流れが止まらない」=「ビジネスが止まらない」仕組み。
それが、Stripe×freee×Zapierの連携による最大の成果です。

