AIが業務の一部になる時代に必要な「プロンプト設計力」
ChatGPTなどの生成AIが、ビジネスの現場で当たり前に使われるようになりました。
経理・法務・営業・カスタマーサポートなど、AIを使えば仕事のスピードは格段に上がります。
しかし、誰もが同じ結果を得られるわけではありません。
同じAIを使っても、“プロンプト”の書き方ひとつで精度も成果も大きく変わるのです。
「AIがうまく使えない」と感じている人の多くは、AIの性能が足りないのではなく、
AIに伝える“指示の言語化”が曖昧なことが原因です。
この記事では、実務の現場で本当に使えるプロンプト例を、
会計・法務・営業・顧客対応の4分野に分けて紹介します。
また、AIをチームに取り入れるための実践的ステップも解説します。
「AIが思ったように動かない」と感じる原因
AIを使うときによくある悩みは次のようなものです。
- 求めている答えが出てこない
- 内容が一般的すぎて使えない
- AIに任せると正確性が不安
- どう指示すればいいかわからない
これらはすべてプロンプト設計の問題です。
AIは“人間の意図”を読み取るわけではなく、入力された文章をそのまま解析します。
たとえば、次の2つの指示を比べてみましょう。
| プロンプト | AIの反応 |
|---|---|
| 「契約書を作って」 | 一般的な契約書のテンプレートを出す |
| 「IT業界の業務委託契約書を、期間1年、報酬月20万円、秘密保持条項付きで作って」 | 条文・構成・条件が揃った具体的な契約書を出す |
たった数行の違いでも、AIの出力はまったく異なります。
つまり、AIを活用する第一歩は「目的を明確に、条件を細かく指定する」ことです。
成果を出すAI利用者が共通して持つ3つの思考
AIを仕事で上手く使いこなす人たちには、ある共通点があります。
それは、プロンプトを「会話の設計図」として扱っていることです。
① 目的思考
AIに「何をしてほしいか」よりも、「なぜそれをするのか」を伝える。
目的を共有すると、AIはより最適な回答を返します。
例:
「経営者が理解できるように、専門用語を避けて説明して」
② 前提共有
AIは前提を知らなければ精度の高い回答ができません。
たとえば「会計の話」をするなら「中小企業」「クラウド会計利用中」など、状況を明示します。
③ ロール指示
AIに役割を与えることで、出力のトーンや内容が明確になります。
例:
「あなたは税理士です。顧問先への説明文を作成してください」
部門別プロンプトが必要な理由
業務ごとに求められるAIの出力は異なります。
「1つの万能プロンプト」で対応するのは現実的ではありません。
| 部門 | 主な課題 | 必要なAI出力 |
|---|---|---|
| 会計 | 数字と根拠の整合性 | 仕訳例・分析コメント・経営レポート |
| 法務 | 条文・リスク・契約条件 | 契約書レビュー・リスク抽出 |
| 営業 | 顧客理解と提案力 | 営業トーク・メール・提案書構成 |
| 顧客対応 | 感情と言葉選び | クレーム対応文・FAQ・返信テンプレート |
AIは「領域別の文脈」を理解させることで、初めて専門的な支援が可能になります。
次章から、実際に業務で使える具体的なプロンプトを紹介します。
会計・経理業務に使えるプロンプト例
日常の仕訳・記帳補助
- 「次の取引内容をもとに、仕訳を教えてください。内容:〇〇株式会社にコンサル料を銀行振込で支払い(110,000円、税込)」
- 「消耗品費と備品の判断基準を、税務上の根拠とともに説明して」
決算・分析サポート
- 「この損益計算書(以下データ)を分析して、改善提案を3点出して」
- 「月次試算表の推移から、利益率悪化の要因を要約して」
顧問先向けレポート作成
- 「経営者に説明するために、財務3表の関係を中学生にもわかるように説明して」
- 「freee会計を使っている中小企業向けに、資金繰り表の見方を分かりやすく解説して」
法務・契約業務に使えるプロンプト例
契約書チェック
- 「以下の契約書の解除条項にリスクがないか確認して」
- 「秘密保持契約書(NDA)の典型的な落とし穴を3つ挙げて」
契約書作成・修正
- 「業務委託契約書を作成。期間1年・報酬月額10万円・再委託禁止」
- 「この契約書文案を、下請法に抵触しないように修正して」
法務相談・リスク分析
- 「個人情報保護法改正後に必要な社内対応策を、社員教育の観点でまとめて」
- 「電子契約と紙契約の法的効力の違いを、わかりやすく説明して」
営業・マーケティングで使えるプロンプト例
顧客理解とターゲティング
- 「30代経営者向けに、自社サービスのペルソナを設定して。属性・悩み・行動傾向を含めて」
- 「競合3社との違いを“顧客が感じる価値”の観点で比較して」
提案書・プレゼン構成
- 「次の条件で提案書の構成案を作って:業種=建設業、目的=コスト削減提案」
- 「プレゼン導入部分のストーリーを“課題→共感→解決策”の流れで作成」
営業メール・フォローアップ
- 「初回面談後のフォローアップメールを、丁寧で営業色が強すぎない文面で」
- 「商談が中断している見込み客に再アプローチするためのメールを3パターン作成」
顧客対応・カスタマーサポートで使えるプロンプト例
クレーム・問い合わせ対応
- 「納期遅延に関するお詫びメールを、誠実で前向きなトーンで作成」
- 「顧客の不満を要約し、社内報告書として使える形式に変換して」
FAQ・ナレッジ整理
- 「よくある質問をFAQ形式で10個作成。対象:クラウド請求書システム」
- 「マニュアルの内容をChatGPTが回答しやすいようにQ&A形式に再構成して」
顧客満足度向上
- 「アンケート結果(以下データ)を分析し、サービス改善提案を5項目まとめて」
- 「AIチャットボット導入後の問い合わせ削減効果を、定量的に説明して」
AIに仕事を任せるときの注意点
AIを業務で使うときに意識すべき最大のポイントは「責任の所在」です。
AIが出した内容はあくまで参考情報であり、最終判断は人間が行う必要があります。
また、以下の点も重要です。
- 個人情報・機密情報を入力しない
- 出力内容は必ず人間の目で確認
- 複数のAIや検索結果でクロスチェック
AIは優秀なアシスタントですが、誤情報を断定的に出すことがあるため、
「確認を前提とした利用」が原則です。
業務をさらに進化させる応用プロンプト例
基礎的な使い方に慣れたら、次はAIを“部下”として使いこなす段階に入ります。
AIに「役割・目的・出力形式」を明示することで、実務で使えるレベルの成果物が得られます。
【会計】応用プロンプト例10選
- 「あなたは中小企業の税理士です。以下の仕訳をレビューし、税務上の誤りを指摘して」
- 「freee会計のデータ(勘定科目・金額)をもとに、翌期の資金繰りをシミュレーションして」
- 「決算書から経営課題を3つ抽出し、社長に伝える説明文を200字で」
- 「税務調査で指摘されやすい経費処理を10項目リストアップ」
- 「会計ソフト間のデータ移行時に注意すべき仕訳ズレのチェックリストを作成」
- 「クラウド会計導入による工数削減効果を数値化して説明」
- 「法人と個人の節税策を比較し、表形式でまとめて」
- 「会計事務所スタッフ教育に使えるChatGPT学習課題を作成」
- 「顧問先の経営分析レポートをテンプレート化して」
- 「税務署に提出する添付書類の説明文を、丁寧で簡潔に作成して」
【法務】応用プロンプト例10選
- 「以下の契約条文を“リスクの大きさ別”に評価して表にまとめて」
- 「電子契約を導入する際の社内ガイドライン案を作成」
- 「下請法違反を防ぐ契約チェックリストを業種別に作成」
- 「秘密保持契約(NDA)で欠けてはいけない項目を説明」
- 「取締役会議事録の雛形を、会社法の要件に沿って生成して」
- 「業務委託契約の解約条項を、双方公平な文面に修正」
- 「リスク説明文を経営層向けに“短く・わかりやすく”書き直して」
- 「法務部でChatGPTを安全に使うための利用ポリシー案を作成」
- 「契約書レビューで“曖昧な表現”を検出するプロンプト例を5つ出して」
- 「コンプライアンス研修で使えるAI教材テーマを提案して」
【営業・マーケティング】応用プロンプト例15選
- 「あなたは法人営業のマネージャーです。新規顧客獲得の戦略を3段階で設計して」
- 「提案書の『導入ストーリー』部分を、顧客の課題共感型に書き換えて」
- 「競合A社・B社・自社のサービス比較を“顧客目線”で作って」
- 「プレゼン資料のタイトル案を5種類。トーンは“信頼×革新”」
- 「断られた顧客を再アプローチするフォローメールを3パターン」
- 「AI分析に基づく営業日報の自動要約プロンプトを作成して」
- 「BtoBリード獲得のためのSNS投稿文を“教育的・共感的・販売的”の3分類で出して」
- 「マーケティング施策をROI(投資対効果)視点で比較表にして」
- 「商談後の議事録を要約し、次回アクションを整理するテンプレートを作成」
- 「ChatGPTを営業チームに導入する教育プランを作って」
- 「顧客インタビュー内容を整理し、“課題→要望→提案方針”に構成」
- 「AIに指示して営業提案書の“差別化ポイント”を抽出させるプロンプト例を5つ」
- 「失注案件の原因分析をAIに行わせるプロンプトを作って」
- 「法人営業で使える顧客分類ロジック(属性×購買意欲)を提案」
- 「営業資料を“経営者向け”に要約するプロンプト構文を設計」
【顧客対応・サポート】応用プロンプト例15選
- 「顧客からのクレーム文(以下)を要約し、感情の温度を数値化して出して」
- 「お詫びメールを“誠実×前向き”トーンで3パターン生成」
- 「問い合わせ内容をカテゴリ別に自動仕分けするプロンプト構文を設計」
- 「AIチャット対応のスクリプト改善点を感情分析付きで出して」
- 「社内共有用に“問い合わせログの1日分”を要約して」
- 「FAQの構成を“質問意図別”に整理して並び替えて」
- 「カスタマーサクセス担当が見るべきKPIを一覧化」
- 「顧客満足度調査の結果(CSV形式)をもとに改善提案を自動生成」
- 「AIチャットボットが回答できなかった質問リストを抽出」
- 「サービス解約者のアンケート結果を分析し、再契約施策を提案」
- 「FAQ更新を自動化するプロンプト設計例を出して」
- 「サポート対応チームの月次報告書を要約」
- 「顧客対応履歴を“感情スコア順”に並べる指示文を作成」
- 「CSチーム用にAI活用ガイドラインを作って」
- 「問い合わせメールの文体を“柔らかく・誠実に”言い換えて」
ChatGPTを“実務AIアシスタント”に育てる設定法
AIをより精度高く活用するためには、プロンプトテンプレートを定義化しておくことが重要です。
次の3つの要素を組み合わせて設定すると、AIの出力が安定します。
| 要素 | 説明 | 設定例 |
|---|---|---|
| 役割 | AIに担わせる職種・専門性を明示 | 「あなたは中小企業向け税理士です」 |
| 目的 | どんな成果物を作るか | 「経営者が理解しやすい決算報告書を作成」 |
| 出力形式 | 結果のフォーマットを明記 | 「見出し+説明文+注意点の3構成で」 |
これらをあらかじめテンプレ化しておけば、誰が使っても同じ品質の回答が得られるようになります。
チームでAIを活用するための仕組みづくり
AIは一人の業務効率化だけでなく、チーム全体の生産性向上ツールにもなります。
特に中小企業や専門事務所では、以下のステップで導入すると効果的です。
ステップ1:社内ルール整備
- 機密情報・顧客データは入力禁止
- 出力内容の確認責任は人間が負う
- 利用ログを共有フォルダで管理
ステップ2:共有テンプレート化
- 会計・法務・営業・サポートの4部門で共通プロンプト集を作成
- 社員全員が同じ形式でAIを使えるようにする
ステップ3:自動化連携
- Zapier・Make・Google Apps ScriptなどでChatGPTと連携
- 「入力→生成→保存」まで自動化
これにより、情報共有・文書作成・報告書作成のスピードが飛躍的に上がります。
明日から実践できるAI活用ステップ
AIを業務に取り入れる最初の1週間で、次の3つを実践しましょう。
- 1日1つのプロンプト改善を試す
→ 同じ質問でも表現を変えてみる。精度の違いを体感する。 - AIに「役割」を与えて会話する
→ 「あなたは〇〇の専門家です」で出力の精度が劇的に上がる。 - 成果をチームで共有する
→ ChatGPTの回答ログを社内共有し、成功事例をテンプレ化。
AI活用は個人のスキルで完結しません。
「共通の型」を持つチームこそが、AI時代の勝者になります。
まとめ:AIを“考えるパートナー”にする時代へ
AIは単なるツールではなく、思考を補完する存在です。
正しいプロンプトを使えば、AIはあなたの右腕となり、
会計・法務・営業・顧客対応といった実務のすべてを支援します。
- 曖昧な質問ではなく、目的を明確に伝える
- 役割・条件・出力形式をセットで指定する
- 個人ではなくチーム全体でプロンプトを共有する
この3つを意識するだけで、AIの出力精度は一気に変わります。
「AIに何を聞くか」を磨く力こそ、これからのビジネスパーソンに求められる新しいスキルです。

