Microsoft CopilotでExcel作業を自動化|関数・マクロを使わない効率化の実例

Microsoft CopilotがExcel作業を自動化している様子を描いたイラスト。AIアシスタントがスプレッドシートを操作し、グラフやデータを効率化している構図。関数やマクロを使わずに自動処理するイメージを表現。
目次

Excelの“面倒な作業”はAIが代わりにやる時代へ

経理や営業、マーケティングなど、日々の業務でExcelを使わない日はありません。
しかし、「数式を組むのが面倒」「マクロが動かない」「集計に時間がかかる」など、
多くの人がExcel作業の煩雑さに悩まされています。

そんな悩みを一気に解決してくれるのが、Microsoft Copilot for Excel(以下、Copilot)
OpenAIのGPT技術を搭載したAIアシスタントが、
これまで人が手で行ってきた関数作成・マクロ処理・データ分析を自然言語で自動化してくれます。

つまり、「この表から月別の売上をグラフ化して」と入力するだけで、
関数もマクロも書かずにAIが結果を出してくれる──そんな時代が到来したのです。


これまでのExcel自動化の限界と課題

Copilot登場以前にも、Excelには自動化の仕組みがいくつか存在していました。
代表的なのが「関数」「マクロ(VBA)」「Power Query」などです。

しかし、実際にこれらを業務に使いこなせていた人は、決して多くありません。
なぜなら、それぞれに次のような限界があったからです。

手法特徴限界・課題
関数シンプルな自動化が可能(SUM・IF・VLOOKUPなど)関数が複雑化しやすく、修正が難しい
マクロ(VBA)繰り返し処理や自動操作に強いコードの理解・管理が難しく、保守が必要
Power Query / Power Automateデータの整形や連携が強力設定手順が多く、専門知識が必要

これらは便利ではありますが、誰でも使えるレベルの自動化ではなかったのです。
その結果、
「一部のExcel上級者だけが自動化できる」「人によって処理のやり方がバラバラ」という課題が残っていました。


Copilotがもたらす“ノーコード自動化”の革命

Copilotの最大の特長は、自然言語でExcelを操作できることです。
つまり、マクロや関数の知識がなくても、AIに指示を出すだけで同じ処理ができます。

例:従来のやり方 vs Copilotのやり方

やりたいこと従来Copilot
売上データを月別に集計したい=SUMIFS(C:C, B:B, "2024/1*") などを組む「月ごとの売上合計を集計して」
空白セルを削除したいVBAやフィルタを使う「空白の行を削除して整えて」
グラフを作りたい「挿入」→「グラフ」→手動設定「月別売上を棒グラフにして」
傾向を分析したいピボットテーブルや統計関数「直近3か月の売上傾向を分析して要約して」

このように、Copilotは人の意図を理解し、最適な関数や処理を自動で生成します。
もはや「関数を覚える」「マクロを書く」必要はなくなりつつあります。


Copilotができることとできないこと

便利なCopilotですが、万能ではありません。
その機能と限界を把握しておくことが、業務導入の第一歩です。

✅ Copilotでできること

  1. 自然言語での集計・加工
    • 「この表の平均を出して」「重複を削除して」などを理解。
  2. データの要約と分析
    • 「売上が減少した原因を分析して」→AIがトレンドを解釈。
  3. グラフやピボットの自動生成
    • 棒グラフ・円グラフを自動で作成・装飾。
  4. テキスト処理
    • 「全角を半角に」「住所から都道府県を抽出」なども対応。
  5. 説明付きの出力
    • 「どうやって計算したの?」と質問すれば、AIが手順を説明。

⚠️ Copilotでまだ難しいこと

項目制限内容
複数ブック連携複数のファイルを同時に処理する操作は非対応(Power Automate推奨)
外部API接続Excel外のサービスとの自動連携は不可
複雑なVBA代替独自ロジックを組んだマクロは再現不可
日本語精度日本語の曖昧な表現だと誤認識するケースもある

Copilotはあくまで「業務効率化の補助AI」。
そのため、ルーチン業務や単純集計の自動化に最も効果を発揮します。


実際にCopilotを活用するメリット

Excel作業をCopilotで自動化する最大の利点は、生産性と品質の両立です。
以下の3つの観点から見てみましょう。


1. 作業時間の短縮

関数やマクロを探す時間がゼロになります。
たとえば「重複削除+件数カウント+グラフ作成」という処理も、
Copilotなら数秒で完了します。

処理内容従来の時間Copilot使用時
データ整形5〜10分10秒
グラフ作成3分5秒
集計・条件抽出10分15秒

2. エラーや属人化の防止

関数ミスやVBAエラーが発生しないため、再現性の高いデータ処理が可能です。
また、誰が作っても同じ結果になるため、業務の属人化を防げる点も大きな魅力です。


3. データ分析のレベルアップ

単に集計するだけでなく、AIが「解釈」まで行ってくれます。
たとえば次のような分析コメントが自動で返ってきます。

「2月の売上は前年比+15%。要因は新商品Aの販売増加によるものです。」

つまり、Copilotは「手を動かすツール」から
“考える補助ツール” へと進化しているのです。


Copilotが関数・マクロを代替する実例

ここからは、実際の代替パターンを紹介します。
従来のExcel操作をどのようにCopilotが置き換えるのか、実際の業務イメージで見ていきましょう。


例1:VLOOKUP関数を使わずにデータ照合

従来の方法

=VLOOKUP(A2, 顧客マスター!A:C, 3, FALSE)

関数を組むたびに参照範囲を指定する必要があり、
範囲変更や列ズレによるエラーが発生しやすい。

Copilotでの方法

「顧客IDをもとに、マスターシートから住所を表示して」

→ AIが自動的に最適な関数を生成し、照合列と出力列を特定。
エラー時も「範囲が違うようです」と指摘してくれる。


例2:マクロの繰り返し処理を置き換え

従来の方法(VBA)

For i = 2 To lastRow
  If Cells(i, 3).Value > 10000 Then
    Cells(i, 4).Value = "高額"
  End If
Next i

Copilotでの方法

「売上が1万円を超える行には『高額』と表示して」

自然言語だけで同じ処理を実行可能。
Copilotが裏でVBA相当のロジックを作成し、
1行ずつ条件を判断して値を入力してくれる。


例3:月次報告レポートを自動生成

「この表をもとに、売上サマリーと上位商品を文章でまとめて」

AIが次のようなレポートを出力:

「今月の売上は前月比+12%。商品Aが全体の35%を占め、利益率も上昇傾向です。」

レポート作成のための集計+文章化+整形がワンクリックで完了。
営業報告や社内プレゼン資料もAIがドラフトを作ってくれます。

部門別で使えるCopilot自動化の応用パターン

Copilotを使ったExcel自動化は、単なる作業効率化にとどまりません。
それぞれの部門で「データをどう活かすか」という視点から見ると、さらに強力な武器になります。


経理・会計部門:月次処理の自動化

経理業務は繰り返しのデータ整形・集計・転記が多く、Copilotとの相性が抜群です。

例:仕訳データの集計と支出分析

「この表から勘定科目別の支出合計を出して、割合をグラフ化して」
→ 数秒で費用分析グラフを自動生成。関数やピボット不要。

応用例

  • 「交通費だけを抽出して月別推移をまとめて」
  • 「交際費の上位取引先を一覧で出して」
  • 「現金と預金の差額がマイナスなら警告を出して」

月次処理の精度・スピード・一貫性が向上し、ヒューマンエラーを大幅に減らせます。


営業・マーケティング部門:ダッシュボード化とトレンド分析

営業報告や売上データの分析も、Copilotで自動化できます。
Excel上で「分析→可視化→コメント生成」までワンステップ。

例:売上ダッシュボードの作成

「このデータをもとに、商品別・月別の売上をグラフ化してまとめて」
→ 複数のグラフを自動配置し、トレンド解釈コメントを追加。

応用例

  • 「上位5商品の売上割合を出して」
  • 「前年比で成長率が高いカテゴリを教えて」
  • 「今月売上が下がった地域をリストアップして」

さらに便利な使い方
CopilotをPower BIやSharePointと連携すれば、リアルタイムで数値を反映するインタラクティブな営業ダッシュボードも構築可能です。


人事・総務部門:勤怠や評価データの自動整理

人事部門では、従業員の勤怠や評価データなど「非定型な情報整理」に時間がかかりがちです。
Copilotを使えば、条件抽出や評価要約を自動で行えます。

例:勤怠データの自動チェック

「遅刻回数が3回以上の人を抽出してリスト化して」
→ 条件抽出からレポート作成までAIが自動化。

評価シートの分析

「上司評価と自己評価の差が大きい社員を一覧で出して」
→ Copilotが表全体を走査し、相関関係を分析。

定型報告の生成

「今月の人事データをまとめてコメント化して」
→ 「平均勤続年数は昨年比+0.3年。退職者数は減少傾向」といった自動レポートを作成。


Microsoft Copilotの導入手順と利用環境

ExcelでCopilotを使うには、単にMicrosoft 365を契約しているだけでは不十分です。
利用には以下の条件を満たす必要があります。


1. 対応プランの確認

プラン名Copilot利用可否
Microsoft 365 Business Standard
Microsoft 365 Business Premium
Microsoft 365 E3 / E5
Microsoft 365 Copilot for Microsoft 365 アドオン✅(個別追加可能)

Business Standardでは利用できないため、上位プランまたはCopilotアドオン契約が必要です。


2. Excelのバージョンと環境

  • Excelデスクトップ版(Microsoft 365バージョン2408以降)
  • Web版Excel(Microsoft Edge / Chrome 推奨)
  • ログインは会社または教育機関のMicrosoftアカウント必須

※個人用Outlookアカウントでは現時点で利用不可です。


3. 有効化手順(管理者向け)

  1. Microsoft 365管理センターにログイン
  2. 「設定」→「Copilotのライセンス管理」
  3. 対象ユーザーにライセンスを割り当て
  4. Excelを再起動すると、右上に「Copilot」アイコンが表示

これで準備完了です。
表示されない場合は、組織ポリシーや管理設定で制限されている可能性があるため、IT管理者に確認しましょう。


実践プロンプト例|業務別テンプレート

Copilotを使いこなすコツは、具体的な指示(プロンプト)を与えることです。
以下に、すぐ使える実用例を紹介します。


経理・会計向け

  • 「今月の支出をカテゴリ別にまとめてグラフ化して」
  • 「交通費の平均金額を部署ごとに出して」
  • 「前月比で支出が10%以上増えた項目を教えて」

営業・マーケティング向け

  • 「売上データから上位5商品の構成比を円グラフにして」
  • 「直近6ヶ月の売上トレンドを線グラフで」
  • 「前年比で最も伸びた地域を要約してコメントして」

人事・総務向け

  • 「勤務時間が上限を超えている人をリスト化」
  • 「評価スコアの平均と中央値を出して」
  • 「部門ごとの残業時間をグラフで可視化して」

データ整形・一般業務向け

  • 「全角の文字を半角に変換して」
  • 「メールアドレスのドメインごとに件数を集計して」
  • 「住所列から都道府県を抽出して新しい列に入れて」

これらのプロンプトは、ChatGPTのように自然な文章でOK。
AIが意図を理解し、適切な処理を実行します。


AI×Excelで「考える時間」を取り戻す

Copilotの真価は、「人間が考える時間を取り戻せる」点にあります。
単純作業に追われるのではなく、意思決定や分析、提案など“思考の業務”に時間を使えるようになるのです。

これからのExcelは、ただの表計算ソフトではなく、
AIと人が協働する「意思決定プラットフォーム」として進化していきます。

あなたの組織でも、Copilotを活用すれば次のような変化が起きるでしょう。

  • 作業時間が1/10に短縮
  • ミスゼロで信頼性アップ
  • 属人化の排除
  • データ活用のスピード向上

ExcelにAIを組み合わせることは、単なる効率化ではなく、
“業務の再設計(Re-Design)”の第一歩なのです。


まずは身近なExcel業務からCopilotを試してみよう

いきなり全社導入を目指す必要はありません。
まずは以下のような“試せる範囲”から始めるのがおすすめです。

  1. 売上集計表や勤怠データなど、単純な構造の表を用意
  2. 「この表を分析して要約して」とCopilotに指示
  3. 生成された出力を確認し、必要に応じて修正

数回繰り返すだけで、Copilotの理解度と再現性が把握できます。
慣れてきたら「テンプレート化」や「Power Automateとの連携」へ進めましょう。


まとめ:CopilotでExcelは“考えるツール”に進化する

従来のExcelは、関数・マクロを駆使して「作業するツール」でした。
Copilotの登場によって、それが「考えるツール」へと変わりつつあります。

自然言語だけで集計・整形・分析ができるようになり、
非エンジニアでもデータドリブンな意思決定が可能になりました。

今後は、Copilotを軸にした“AI連携型業務フロー”が
あらゆるビジネス現場に広がっていくでしょう。

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