SNS・AI時代に増える「知らずに著作権侵害」のリスク
SNS投稿やブログ、動画制作、AI画像生成など、個人でも簡単にコンテンツを発信できる時代になりました。
しかしその裏で増えているのが、**「知らずに著作権を侵害してしまうトラブル」**です。
たとえば、
- フリー素材サイトの画像を使ったら、実は商用利用NGだった
- AIが作った画像を広告に使ったら、著作権の帰属が不明で削除された
- Webフォントを使ってパンフレットを作ったら、再配布禁止に違反していた
こうしたトラブルは、「悪意がなくても起こる」ことが特徴です。
つまり、「知らなかった」では済まされないリスクがあるのです。
本記事では、画像・フォント・生成AIを中心に、
著作権と商用利用に関する実務ルールをわかりやすく解説します。
なぜ今「商用利用ルールの理解」が重要なのか
1. AI・SNS時代で境界線があいまいに
かつては企業だけが広告やデザインを発信していましたが、
今では個人クリエイターやフリーランスでもSNS広告・電子書籍・動画制作を行うのが当たり前になりました。
特に生成AIの登場により、
「素材を自分で作っているから安心」と思い込む人が増えています。
しかしAIが学習に使ったデータや、生成物の扱いには法的グレーゾーンが多く残っています。
2. 「フリー素材」でも違反になるケースがある
「無料」「商用可」と書かれた素材サイトでも、実際には以下のような制限があることがあります。
| 項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 再配布禁止 | 加工後の画像を他人に配布できない | Canva素材を再販売する行為など |
| クレジット必須 | 作者名・サイト名の記載が必要 | Unsplash、Pixabayなど一部素材 |
| 二次利用禁止 | ロゴ・商標登録への使用が不可 | フリーアイコンをブランドロゴに使用 |
| 有償ライセンスあり | 商用利用には別途契約が必要 | Adobe Fonts、Shutterstockなど |
「無料だから大丈夫」と思い込むのは危険です。
素材サイトごとに異なる利用規約を確認することが必須です。
3. フォントにも著作権がある
意外と見落とされがちなのがフォントのライセンス。
特に商用利用の場合、次のような違反リスクが発生しやすいです。
- 無料フォントを印刷物に使った(非商用限定だった)
- Webフォントをローカル環境で使い回した
- Adobe Fontsで作成したデザインを他社に販売した
フォントは「デザイン(字形)」に著作権がある場合と、
「プログラム(フォントファイル)」に著作権がある場合があります。
したがって、利用範囲はフォントごとに異なるという点に注意が必要です。
AI生成物の著作権は誰にあるのか?
生成AIの普及に伴い、著作権法の新しい論点として注目されているのが「AI作品の権利帰属」です。
1. 人間が創作したと認められない場合は著作権が発生しない
著作権は「人の創作的表現」にのみ発生します。
つまり、AIが自動で生成した画像や文章は、法律上「著作物」として保護されない場合があります。
ただし、人がAIに具体的な指示(プロンプト)を与え、構成や修正を加える場合は、
その人の創作性が認められ、共同著作物として扱われる可能性があります。
2. AI学習データの著作権問題
AIは大量の既存コンテンツを学習して生成を行います。
そのため、次のようなケースが問題になっています。
| ケース | 法的リスク | 対応策 |
|---|---|---|
| 著作権者の作品を無断学習 | 権利侵害のおそれ | 商用利用OKな学習データを使うAIを選択 |
| 有名キャラに似た画像生成 | 著作権・商標権侵害の可能性 | 類似・二次創作を避ける |
| AI作品をそのまま販売 | 著作権の帰属不明でトラブル | 利用規約で商用利用可を確認 |
Midjourney、Canva、DALL·E、Stable Diffusionなど主要サービスの中でも、
商用利用の可否やクレジット義務が異なるため、利用前に規約を確認することが大切です。
商用利用で押さえるべき3つの基本ルール
商用利用のルールはシンプルに言えば「誰が権利者か」「どこまで使えるか」を明確にすることです。
以下の3点を押さえるだけで、トラブルの大半は回避できます。
1. 「誰の著作物か」を明確にする
- 自作か、他人の作品か
- AIで生成したものか
- 外部素材を使ったか
を明確にし、出典を記録しておくこと。
特にAI作品はどのツールで、どんな指示を与えたかをメモしておくと良いでしょう。
2. 「どこまで使っていいか」を確認する
- 商用利用の可否
- 再配布・販売の制限
- 加工・改変の可否
- クレジット表記の要否
を確認します。
商用利用OKでも、「ロゴ・商標登録不可」「再配布不可」などの例外は多くあります。
3. 「利用規約を読む」習慣をつける
すべての素材サイト・AIツールには利用規約があります。
英語表記が多いですが、**「Commercial Use」「Redistribution」「Attribution」**などの項目をチェックするだけでもOKです。
よく出る英語表現の意味
| 英語 | 意味 |
|---|---|
| Commercial Use | 商用利用可 |
| Non-commercial | 非商用限定 |
| Attribution Required | クレジット表記が必要 |
| No Derivatives | 改変禁止 |
| Redistribution Prohibited | 再配布禁止 |
AI画像や素材を使うときの実務上の注意点
AIやフリー素材を使うときは、以下の3点を実務的に意識しておくと安心です。
- 出典・生成履歴を残す
→「出典URL」「生成AI名」「プロンプト内容」などを記録。 - 加工した場合も元素材のライセンスを尊重
→ 加工しても権利は消えない。 - 第三者の権利(人物・商標・建物)も確認
→ 被写体に写る人物・企業ロゴなどの肖像権・商標権にも配慮。
フォント利用の実務ルールと見落としがちな落とし穴
1. フォントは「デザイン」ではなく「プログラム」が著作物
フォントの「形(字形)」は著作権法上の保護対象にならない場合が多いですが、
フォントファイル(プログラム)」自体には著作権があります。
つまり、フォントをダウンロードして使用する際には、
「そのフォントデータをどう使うか」についてライセンス契約で制限されています。
2. 商用利用可でも「再配布・埋め込み」は別
たとえば、ある無料フォントが「商用利用可」と記載されていても、
以下のような行為はライセンス違反になることがあります。
| 行為 | 違反リスク | 対策 |
|---|---|---|
| フォントをWebサイト内で配布 | 再配布禁止に該当 | 配布ではなくリンクで紹介 |
| PDFやアプリに埋め込み | 埋め込み禁止ライセンスに違反 | 埋め込み可フォントを使用 |
| 他の人にデザインデータを納品(フォント埋め込み) | クライアントが無許諾利用になる | アウトライン化して納品 |
3. よく使われるフォントの商用可否(比較表)
| フォント名 | 商用利用 | 再配布 | PDF埋め込み | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Noto Sans(Google) | 〇 | × | 〇 | 無料・Web利用OK |
| 源ノ角ゴシック(Adobe) | 〇 | × | 〇 | Adobe Fonts契約者限定 |
| メイリオ | 〇(OS同梱に限る) | × | 〇 | Windowsに付属 |
| 游ゴシック | △(用途限定) | × | △ | 印刷・配布制限あり |
| しねきゃぷしょん | ×(非商用のみ) | × | × | フリーでも商用不可 |
| M+ FONTS | 〇 | 〇 | 〇 | 完全オープンライセンス |
✅ ポイント
商用利用可の範囲は「販売目的で使えるか」だけでなく、
「印刷・配布・埋め込み」などの二次利用範囲も確認する必要があります。
AI画像・素材サイトごとの商用利用ルール比較
AI生成画像や素材サイトを使う際には、プラットフォームごとのライセンスルールが重要です。
主要なサービスを比較すると、以下のようになります。
| サービス名 | 商用利用 | クレジット表記 | 再配布 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Canva | 〇(プロ素材除く) | 不要 | × | 一部プレミアム素材は不可 |
| Adobe Stock | 〇 | 不要 | × | 商標登録・ロゴ利用はNG |
| Unsplash | 〇 | 任意 | × | 再配布不可だが商用可 |
| Pixabay | 〇 | 不要 | × | モデル肖像の保証なし |
| DALL·E(OpenAI) | 〇 | 不要 | × | 商用可・著作権帰属は利用者 |
| Midjourney | 〇(有料プラン限定) | 不要 | × | 無料プランは商用不可 |
| Stable Diffusion(ローカル) | 〇 | 不要 | 〇 | 自己責任利用・再配布可 |
⚠️ 注意点
- 「商用可」でも、モデルやブランドを模した画像は権利侵害になる。
- AI生成物を**再販売(素材サイトへのアップロード)**する場合は、二次利用禁止の確認が必須。
実際のトラブル事例と対応策
事例①:ブログ用画像にフリー素材を使ったら削除要請
無料素材サイトの画像を加工してブログに掲載したところ、
配布元から「商用利用禁止素材を使っている」と指摘されたケース。
原因: 利用規約の「商用利用不可」部分を見落としていた。
対策: 記事制作時に素材の出典と利用条件をスプレッドシートで管理。
事例②:AI生成画像を広告に使ったら「似ている」とクレーム
AIで生成したイラストが、あるアニメキャラに酷似していた。
SNS広告に使用したところ、著作権者から削除要請。
原因: AIの学習データに既存作品が含まれていた可能性。
対策: 「商用利用OK・学習データ透明化済み」のAIサービスを使用する。
事例③:デザイン納品時にフォントのライセンス違反
クライアントに納品したチラシデータ(Illustrator形式)に、非商用フォントをそのまま埋め込んでいた。
原因: フォントの配布制限を確認していなかった。
対策: アウトライン化または商用ライセンス取得済みフォントを使用。
トラブルを防ぐための実務チェックリスト
著作権・商用利用トラブルを防ぐための最小限チェックリストを以下にまとめます。
✅ 素材・AI・フォント共通チェック
- 利用規約を必ず確認した
- 商用利用範囲を理解した(広告・販売含む)
- クレジット表記の有無を確認した
- 再配布・販売の制限を確認した
- 出典・ライセンス情報をスプレッドシートに記録した
✅ AI生成物チェック
- 商用利用可能なAIツールを使用している
- 有名キャラクターやブランドの模倣を避けている
- 生成履歴(プロンプト・日時・ツール)を保存している
✅ フォントチェック
- 印刷・PDF埋め込みが許可されている
- 再配布・クライアント納品時の条件を理解している
- 無料フォントの「非商用」表記に注意した
このチェックをプロジェクトごとに行うだけで、
トラブル発生率を大幅に下げることができます。
実務での安全な運用ステップ(5ステップ)
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 使用素材・フォントをリスト化 | 出典・利用範囲を明記 |
| ② | 商用可否・再配布可否を確認 | 素材サイトやAI利用規約 |
| ③ | 権利者情報を管理 | 作者・ライセンス情報を残す |
| ④ | 加工・配布時の条件確認 | 加工しても権利は消えない |
| ⑤ | AI生成物・画像の利用履歴を保存 | 将来の証明・トラブル対応に備える |
まとめ:AI時代のクリエイティブには「法務リテラシー」が必須
AI・画像・フォントの活用は、クリエイターや企業に大きな効率化をもたらす一方で、
著作権・商用利用の理解不足が最大のリスクになります。
重要なのは「使えるかどうか」ではなく、
「どう使うか」を自分で判断できるようになること。
法律知識を専門家レベルで身につける必要はありません。
ただし、「利用規約を読む・出典を記録する・AI生成履歴を残す」
この3つを徹底するだけで、法務トラブルの多くは回避できます。
AIが進化するほど、人間の**“法的リテラシー”が価値を持つ時代**になっています。

