経理担当が悩む「固定資産と減価償却」の仕訳処理
パソコンや車、設備、什器など、10万円を超える購入品は「固定資産」として登録し、
複数年にわたって費用化する必要があります。
しかし、多くの個人事業主や中小企業では「どこまでを資産計上すべきか」「減価償却の自動計算をどう設定するか」でつまずきがちです。
とくにクラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワードクラウド会計)を使うと、便利な自動登録機能がある一方、
登録方法を間違えると決算書に誤差が出たり、税務署から指摘を受けるリスクもあります。
この記事では、freee会計とマネーフォワード(MF)を使った固定資産登録・減価償却の正しい手順と、
税法・会計の最新ルールに沿った設定方法を、初心者でも迷わず実践できるように解説します。
固定資産登録でミスが起きる3つの典型パターン
経理ソフトで固定資産を登録するときに多い間違いは、以下の3つです。
- 「経費」と「固定資産」の区分を誤る
- 耐用年数を誤って設定する
- 償却方法の選択を間違える(定額法/定率法)
これらを理解せずに登録してしまうと、決算書の数字がずれたり、翌年以降の自動計算が狂うことがあります。
ここでは、それぞれの原因と回避策を見ていきましょう。
① 経費と固定資産の区分を誤る
たとえば、パソコンを購入した場合。
10万円未満なら一括で経費処理できますが、10万円以上は原則として資産計上が必要です。
ただし、税法上には「少額減価償却資産の特例(30万円未満)」があり、
中小企業や個人事業主であれば、青色申告している場合に30万円未満の資産を一括経費化できます。
| 区分 | 処理方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費 | 即時経費化OK |
| 10万~30万円未満 | 少額減価償却資産 | 青色申告なら一括経費可 |
| 30万円以上 | 固定資産登録 | 減価償却で費用化 |
② 耐用年数を誤って設定する
減価償却の金額は、**耐用年数(資産の使用可能期間)**によって決まります。
freeeやMFでは、登録時に「資産区分」を選ぶと自動的に耐用年数が設定されますが、
業種や用途によって実際の耐用年数が異なる場合があります。
例:パソコンの場合
- 一般事業用 → 4年
- プログラム開発用 → 3年
- サーバー等の設備 → 5年
💡ポイント:
税務上の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。
freee・MFでは最新の省令を自動反映していますが、登録時の選択を誤ると計算結果も変わります。
③ 定額法/定率法の選択ミス
減価償却には大きく2つの方法があります。
| 償却方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 定額法 | 毎年同じ金額を費用計上 | パソコン・什器など使用量が均一な資産 |
| 定率法 | 初年度に多く費用を計上 | 機械設備や車両など劣化が早い資産 |
💡ワンポイント:
中小企業や個人事業主は、原則として「定額法」が基本。
定率法を使う場合は、税務署への「減価償却方法の届出書」提出が必要です。
freeeとMFの違いを理解して正しく登録する
freee会計とマネーフォワードクラウド会計(MF)は、どちらも固定資産の登録・自動償却に対応していますが、
操作画面と処理ロジックに違いがあります。
ここでは、主要な違いを整理します。
freee会計の特徴
- 「固定資産台帳」が自動作成される
- 登録日を入力するだけで自動仕訳を作成
- 月次償却の自動仕訳が定期的に反映
- 耐用年数・償却方法が国税庁データに基づき自動提案
- 償却費は「減価償却費/建物・車両・工具器具備品」などに自動分類
freeeは初心者でもミスが起きにくい設計で、仕訳ルールが自動化されています。
マネーフォワード(MF)の特徴
- 固定資産管理モジュールが独立している
- 償却方法・残存価額・計算基準日を細かく設定可能
- Excel形式でのインポート/エクスポートに対応
- 決算書の「減価償却明細書」を自動作成
MFは会計事務所や上場準備企業など、細かい設定を求める層に向いています。
freee・MFの比較表
| 項目 | freee会計 | マネーフォワード会計 |
|---|---|---|
| 対応資産 | 建物・車両・工具器具・ソフトウェアなど | 同様(+リース資産も) |
| 登録方法 | 明細から「固定資産登録」 | 固定資産台帳に手動入力 or CSV |
| 自動償却 | 〇(毎月) | 〇(年次または月次) |
| 決算書連動 | 自動 | 自動+手動調整可能 |
| 償却方法 | 定額法(基本)・定率法 | 定額法・定率法・生産高比例法 |
| ユーザー層 | 個人事業主~中小企業 | 法人・会計事務所向け |
減価償却の計算ルールを整理する
固定資産の減価償却を正しく行うためには、計算ルールの基本を押さえる必要があります。
freeeやMFが自動で計算してくれるとはいえ、設定を誤れば数字がずれてしまいます。
減価償却費の基本式
減価償却費 = 取得価額 × 償却率 × (使用月数/12)
例:取得価額 500,000円、耐用年数5年、定額法の場合
→ 500,000 ÷ 5 = 100,000円/年
→ 年間償却費:100,000円(月8,333円)
取得月による月割計算
freee・MFともに、資産の取得月に応じて月割で自動計算します。
たとえば7月に取得した場合は、7~12月の6ヶ月分のみ計上されます。
💡例:7月取得のパソコン(5年耐用)
→ 初年度償却費:100,000 × 6/12 = 50,000円
残存価額と償却率
現在の税法では、残存価額は原則0円(平成19年改正以降)。
つまり、資産の価値は耐用年数終了時点でゼロになる想定で計算されます。
一方、定率法の場合は償却率が異なり、初年度に多く計上されるよう調整されています。
償却費の自動仕訳(freeeの場合)
固定資産登録が完了すると、freeeは自動的に仕訳を生成します。
仕訳例:
借方:減価償却費 100,000
貸方:備品 100,000
翌期以降も月次・年次で自動登録されるため、手動の計算は不要です。
ただし、途中売却・廃棄の際は「除却登録」が必要です(後述)。
freeeで固定資産を登録する具体的な手順
ここでは、freee会計での固定資産登録と減価償却設定を、実際の操作画面を想定して順に説明します。
ステップ①:支出明細を登録する
まず、銀行口座やクレジットカード連携により、購入時の明細を取り込みます。
登録時の勘定科目は一旦「消耗品費」「工具器具備品」などにしておきましょう。
ステップ②:「固定資産として登録」を選択
対象となる支出明細を選択し、詳細画面から「固定資産として登録する」をクリックします。
すると、次のような入力項目が表示されます。
- 資産の名称(例:MacBook Air M3)
- 取得金額
- 資産区分(パソコン/車両/建物など)
- 取得日
- 償却方法(定額法・定率法)
- 耐用年数
これらを入力して保存すると、自動的に固定資産台帳に登録されます。
ステップ③:自動仕訳を確認する
登録後、freeeは「減価償却費」の自動仕訳を毎月作成します。
仕訳を確認するには「取引 → 固定資産台帳」から該当資産をクリック。
翌月以降、「減価償却費/工具器具備品」といった仕訳が自動で反映されます。
💡ワンポイント
自動登録のタイミングは月初です。決算期をまたぐ場合は、年次決算前に必ず「未償却額」を確認しましょう。
マネーフォワード(MF)での固定資産登録手順
マネーフォワードクラウド会計では、固定資産管理モジュールを使って登録します。
ステップ①:「固定資産管理」メニューを開く
メインメニューから「決算・申告 → 固定資産管理」を選択します。
ここで「新規登録」ボタンをクリック。
ステップ②:資産情報を入力
以下の項目を入力します。
- 名称(例:業務用車両)
- 取得日・取得価額
- 償却方法(定額法・定率法など)
- 耐用年数
- 償却開始年月
MFでは「残存価額」や「償却期間の短縮」など、税法特例に対応した細かい設定が可能です。
ステップ③:減価償却の自動計算を実行
登録後、「自動償却」ボタンをクリックすると、月次・年次の減価償却額が自動計算されます。
決算時には「減価償却費一覧」から、**減価償却明細書(法人税・所得税申告用)**を自動出力可能。
💡ポイント
MFは会計事務所のレビューを前提にしており、freeeよりも調整項目が多い設計です。
個人事業主ならfreee、法人ならMFが使いやすい傾向があります。
固定資産の売却・除却処理の流れ
減価償却済みの固定資産を売却・廃棄した場合、その処理を正しく行わないと、決算で誤差が生じます。
freeeの場合
「固定資産台帳」から該当資産を選択し、「除却・売却を登録」をクリック。
売却の場合
- 売却金額を入力
- 売却日を設定
- 仕訳が自動生成されます
自動仕訳例:
借方:普通預金 100,000
借方:減価償却累計額 400,000
貸方:備品 500,000
貸方:固定資産売却益 0(または売却損)
廃棄(除却)の場合
売却金額を「0円」にして登録。
自動的に「除却損」が計上されます。
減価償却の見直しと修正方法
期中に設定を誤った場合や、償却額がずれたときは修正が必要です。
freeeの場合
- 「固定資産台帳」→該当資産を開く
- 「編集」ボタンで取得日・償却方法・耐用年数を修正
- 修正後、「再計算」をクリックすると、差額が自動で補正仕訳されます
MFの場合
- 「固定資産管理」→「登録資産一覧」から修正対象を選択
- 「修正登録」→更新
- 再計算後、自動で帳票に反映
💡注意点
税務上は「償却方法の変更」は届出が必要なケースもあります。
途中で定率法→定額法に変更したい場合は、税務署へ「減価償却方法の変更届出書」を提出しましょう。
ミスを防ぐための固定資産運用チェックリスト
| チェック項目 | 内容 | 実施タイミング |
|---|---|---|
| 資産登録区分の確認 | 経費・固定資産の区分ミス防止 | 登録時 |
| 耐用年数の確認 | 国税庁耐用年数表に準拠 | 登録時 |
| 償却方法の確認 | 定額法・定率法の届出有無 | 登録時 |
| 自動仕訳確認 | 月次償却の自動反映 | 毎月末 |
| 除却処理の有無 | 売却・廃棄時の仕訳確認 | 随時 |
| 残高照合 | 固定資産台帳と貸借対照表の整合性 | 決算時 |
AIを使って固定資産登録を効率化する方法
freee・MFはそれぞれAI OCR・自動仕訳機能を搭載しています。
領収書や請求書のスキャンデータから自動的に勘定科目を提案し、
固定資産として登録すべき取引をAIが自動判定してくれる仕組みです。
💡freeeのAI自動登録機能
- 「AI受領証スキャン」で領収書から勘定科目を判別
- 固定資産に該当しそうな取引をハイライト表示
- ワンクリックで「固定資産台帳」に連携
💡MFのAI仕訳ルール学習
- 同じ資産区分の登録を学習
- 次回以降は自動で耐用年数を設定
- 資産の勘定科目ミスを防止
このようにAIを併用することで、登録・計算・除却すべてのプロセスが半自動化できます。
実務担当者がやるべき次のステップ
最後に、この記事を読んだあとに実践すべき行動をまとめます。
- すべての資産を棚卸しして一覧化する
→ 「固定資産台帳」を見直し、登録漏れをなくす。 - freee/MFの自動償却設定を確認する
→ 月次償却が正しく走っているか、仕訳履歴を確認。 - 耐用年数・償却方法を税法と照合
→ 業種に応じた耐用年数表で正しい設定を。 - AI仕訳機能を活用して登録を省力化
→ 領収書や請求書をAIスキャンで自動判定。 - 決算前に除却・売却資産を整理
→ 残存価額0円の資産を除却登録しておく。
これらを実施することで、税務リスクを最小化し、決算書の精度を高めることができます。
【まとめ】
固定資産の登録や減価償却は、経理業務の中でも正確性が求められる分野です。
freeeやMFを使えば自動化が進む一方、初期設定を誤ると修正に手間がかかるのも事実。
この記事で紹介した手順やチェックリストを活用し、
AIや自動仕訳をうまく組み合わせて「正確かつ効率的な経理運用」を実現しましょう。

