会議後の議事録作成に時間を奪われていませんか?
オンライン会議が当たり前になった今、
「議事録をどう効率化するか」は多くのチームにとって共通の課題です。
Zoom、Google Meet、Teamsなどを使って会議を行ったあと、
音声を録音し、要点をまとめ、Slackやメールで共有する——。
この一連の作業は地味ながらも時間と集中力を奪います。
特に、
- 議事録担当が固定化されている
- Slackで情報共有が遅れる
- 要点だけを短くまとめるのが苦手
といった悩みは、どのチームにもあるでしょう。
しかし、ChatGPTやWhisper(音声認識AI)などの無料枠を活用すれば、
「AIが自動で文字起こし→要約→Slack配信」まで完結する仕組みを構築できます。
この記事では、エンジニアでなくても構築できる
Slackボット×AI議事録の自動配信フローを、無料でできる範囲に絞ってわかりやすく解説します。
議事録作成に潜む3つの非効率
1. 書き起こしの時間が長すぎる
人間が1時間の会議を文字起こしする場合、
平均で3〜5時間かかると言われています。
その間に他のタスクは止まり、内容の精度も担当者のスキルに左右されます。
2. 要約の粒度がバラバラ
手作業の議事録では、
「何を残すか」「どこまで削るか」の判断が曖昧になりやすく、
後から見返しても使いづらいことが多いです。
AIによる自動要約を導入すれば、
一貫したフォーマットと粒度でまとめられ、情報共有がスムーズになります。
3. Slack共有の遅延
せっかく会議が終わっても、議事録共有が数時間後になるケースは多いです。
Slackで自動投稿できれば、
**「会議終了後3分以内に共有」**といったスピード配信が可能になります。
解決策:AI×Slackで議事録を自動化する
Slackには「ボット(自動実行プログラム)」を組み込むことができ、
このボットにChatGPTやWhisperなどのAIを連携させることで、
**“AI議事録の自動配信システム”**を作ることができます。
この仕組みのメリットは次の通りです。
| 機能 | AIが行う処理 | メリット |
|---|---|---|
| 音声文字起こし | Whisper API / Google Speech-to-Text | 書き起こしの手間ゼロ |
| 要約 | ChatGPT / Claude | 重要部分だけを自動抽出 |
| 投稿 | Slack API / Zapier | 即時共有・通知可能 |
しかもこの3つはすべて無料枠でも十分実用的。
つまり、有料プランに切り替えずとも、
中小企業や個人チームでも導入できるのが大きな利点です。
仕組みの全体像
SlackボットによるAI議事録配信の全体構成を簡単に説明します。
① 会議録音 → ② 音声ファイルをアップロード →
③ Whisperで文字起こし → ④ ChatGPTで要約 →
⑤ Slackボットが自動投稿
フローを一言で言えば、
**「音声ファイルをアップするだけで議事録がSlackに届く」**という仕組みです。
これをノーコードまたはローコードで実現するには、
次のツールが主に使われます。
| 工程 | 使用ツール | 無料枠の有無 |
|---|---|---|
| 音声アップロード | Google Drive / Dropbox | あり |
| 文字起こし | Whisper(OpenAI) | あり |
| 要約処理 | ChatGPT API | あり(無料枠制限あり) |
| Slack通知 | Slack App(Webhook連携) | あり |
これらを組み合わせることで、
1人でも「AI議事録配信ボット」を構築できます。
なぜSlackなのか:チームの情報流通を最短化できる
1. メンバー全員が見る場所に届く
メールやドキュメントでは「見る人・見ない人」に差が出ますが、
Slackはチャンネル単位で通知が届くため、
会議後すぐに全員が同じ情報を見られる点が優れています。
2. 検索性が高い
Slackの検索機能で「#議事録」などのタグをつけておけば、
過去の議論内容もすぐに探し出せます。
ChatGPTの要約と組み合わせることで、
“検索可能な社内ナレッジ”として蓄積していくことが可能です。
3. 外部ツールとの連携が容易
SlackはZapierやMake、Google Apps Scriptなどとの連携が豊富で、
**「会議完了」→「AI処理」→「投稿」**の自動化がシームレスに実現できます。
無料で実現できる理由:オープンAPIの進化
AI議事録ボットを無料で構築できる背景には、
オープンAPI(無料で使えるAIインターフェース)の進化があります。
特に以下の3つは、無料でも実用レベルです。
| サービス | 機能 | 無料利用条件 |
|---|---|---|
| Whisper(OpenAI) | 音声認識(文字起こし) | API経由で短時間音声を無料処理可能 |
| ChatGPT(gpt-3.5-turbo) | 自動要約・要点抽出 | OpenAI無料API枠またはChatGPT Plusで利用可能 |
| Slack Webhook | メッセージ自動投稿 | 完全無料・コード不要 |
つまり、「録音データ」と「OpenAI APIキー」さえあれば、
高精度なAI議事録システムを誰でも構築できるのです。
実際に構築できるAI議事録ボットの仕組み
Slackボットで議事録を自動化するには、
「音声認識(Whisper)→要約(ChatGPT)→配信(Slack)」の3ステップをつなぐだけです。
複雑なコードは不要で、ZapierやMakeを使えばノーコードで実現可能です。
ここでは2つの代表的な構築方法を紹介します。
方法①:Zapierを使うノーコード構築(最も簡単)
Zapierは「アプリ同士をつなぐ自動化ツール」で、無料枠でも十分活用できます。
会議音声をGoogle Driveに保存した瞬間に、自動で処理が走る仕組みを作れます。
フロー全体
Google Drive(音声アップ)
↓
Whisper API(文字起こし)
↓
ChatGPT API(要約)
↓
Slack Webhook(自動投稿)
ステップ詳細
| 手順 | 設定内容 |
|---|---|
| 1 | Zapierにログインし、「新しいZap」を作成 |
| 2 | トリガーに「Google Drive – 新しいファイルが追加されたとき」を選択 |
| 3 | アクションに「Webhooks by Zapier – POST」を設定し、Whisper APIへ音声送信 |
| 4 | Whisperの出力をChatGPT APIに送って要約 |
| 5 | 最後にSlackのIncoming Webhook URLを設定して投稿 |
Slack投稿メッセージ例
📝【AI議事録が自動生成されました】
会議タイトル:経営戦略ミーティング
要約:
・2025年の新サービスローンチを5月に決定
・マーケ予算は現状維持で進行
・次回は1/20 10:00〜
🔗 詳細文字起こし:Driveフォルダ参照
無料プランのZapierでは月100回まで処理可能なので、
小規模チームや社内ミーティングには十分対応できます。
方法②:Make(旧Integromat)で柔軟構築(条件分岐あり)
Makeを使うと、Zapierよりも複雑な条件分岐や再利用が可能です。
たとえば「議事録が特定のSlackチャンネルにのみ送信される」「特定ワードを含む場合は管理者にDM」などの細かな設定もできます。
Make構成の例
① Google Driveで音声検出
② Whisper APIに送信して文字起こし
③ ChatGPTで要約
④ Slack APIで投稿(条件分岐あり)
条件分岐の設定例
| 条件 | 処理内容 |
|---|---|
| 「経営」「予算」など特定ワードを含む | 管理チャンネルへ投稿 |
| 「顧客」「対応」など顧客対応関連 | カスタマーサポートチャンネルへ投稿 |
| それ以外 | 一般議事録チャンネルへ投稿 |
Makeは月1,000操作まで無料で使えるため、
Slack運用が多い企業でもコストを抑えて運用できます。
ChatGPTに要約させるプロンプトテンプレート
AIに「どのように要約させるか」で議事録の品質が変わります。
以下のテンプレートをChatGPT APIの入力に設定しておくことで、
読みやすい議事録を安定して生成できます。
要約プロンプト例
あなたは企業の会議議事録を作成する専門アシスタントです。
以下の音声文字起こしを、社内共有に適した形式で要約してください。
【要件】
・箇条書き形式で3〜6項目にまとめる
・重要な決定事項とToDoを分けて記載
・自然な日本語で、誰が読んでもわかるように
・不要な挨拶や雑談は削除する
テキスト:
{{Whisper出力結果}}
出力結果はSlackにそのまま貼っても読みやすいフォーマットになります。
Slackへの投稿フォーマットを整える
Slackは「Markdown形式」に対応しているため、
要約テキストを装飾することで可読性を高められます。
推奨フォーマット例
📋 *AI議事録(自動生成)*
*会議タイトル:* 営業戦略定例MTG
*開催日時:* 2025/02/10 14:00〜15:00
🧩 *主な議論内容:*
• 新製品Aの販売目標を再設定(目標+10%)
• 広告費は4月以降に再検討
• 顧客フィードバックシステムを導入予定
✅ *次回アクション:*
・営業資料の改訂案を来週共有(担当:田中)
・KPIダッシュボードの試作案提出(担当:佐藤)
Slackのチャンネルにそのまま流しても、
強調や絵文字で見やすく、議事録担当者の確認もスムーズになります。
無料プランでの制限と運用のコツ
| 項目 | 無料枠の制限 | 対応策 |
|---|---|---|
| Zapier / Make | 月100〜1,000処理まで | 月次リセットを活用・重要会議のみ対象 |
| OpenAI API | トークン数に上限あり | 要約だけChatGPT(短文化)に限定 |
| Whisper API | 長時間音声は分割が必要 | 10分単位で分割アップロード |
| Slack Webhook | 無制限 | 問題なし |
無理にすべての会議を対象にせず、
「定例会議」や「報告会」など繰り返し発生する会議のみを自動化対象にすると安定します。
実務で活用するポイント
1. 会議後5分以内の配信を目指す
Slackにリアルタイムで議事録が流れることで、
参加できなかったメンバーも即座に内容を把握できます。
2. ChatGPTに“チーム文体”を学習させる
AI要約の文体はプロンプトで統一できます。
「社内共有向け」「経営報告用」「クライアント用」など用途別に調整しておくと便利です。
3. Slackワークスペースごとにボットを分ける
部署ごとに専用ボットを設置すれば、
不要な情報を見ずに済み、チーム単位で完結したナレッジ共有ができます。
AI議事録自動配信を導入する手順まとめ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | Google Driveで音声ファイルをアップロード |
| ② | Whisper APIで文字起こしを自動化 |
| ③ | ChatGPTで要約処理(テンプレプロンプト使用) |
| ④ | Slack Webhookで自動投稿 |
| ⑤ | テンプレを保存し、次回会議から繰り返し活用 |
この仕組みを一度構築してしまえば、
「議事録作成=AIが勝手にやる」状態になります。
今すぐ始められる行動ステップ
✅ 1. Whisper APIキーを取得
OpenAIのアカウントを作成し、APIキーを発行。
✅ 2. Slack Appを作成
api.slack.com からWebhook URLを取得。
✅ 3. ZapierまたはMakeを設定
「Google Drive → Whisper → ChatGPT → Slack」の連携を組む。
✅ 4. 試しに10分の会議音声でテスト
小さな音声ファイルから精度を確認。
✅ 5. チーム内で運用ルールを共有
Slack投稿のフォーマットやチャンネルルールを明文化。
導入後の効果:会議時間がそのまま“資産”になる
AI議事録の自動化を導入すると、
議事録担当者が不要になり、情報共有のスピードが圧倒的に上がります。
Slack上に「議事録ログ」が蓄積されていくことで、
過去の議論を検索・再利用できるようになり、
チーム全体の意思決定が可視化されていきます。
会議が終わるたびに、
AIが要点をまとめ、Slackが配信する——。
その瞬間、議事録は「作るもの」ではなく「自動で届くもの」になります。

