メール受信から請求書発行まで自動化できたらどうなる?
毎月の請求書発行、あなたの事務時間をどれだけ奪っているでしょうか。
クライアントからの「○月分の請求書をお願いします」というメールを受け取ってから、
freeeにログインして手動で請求書を作り、PDFにして送信する──
この一連の流れ、実はZapierを使えば全自動化できます。
今回紹介するのは、
「Gmail → Googleスプレッドシート → freee請求書」
という自動化レシピ。
これを一度設定すれば、
Gmailの受信をトリガーにスプレッドシートが更新され、
そのデータを元にfreeeが請求書を自動で作成します。
つまり、「メールが届く → 請求書が発行される」まで、人の手を一切介さない仕組みです。
請求書作業が非効率な理由と“自動化の壁”
多くの中小企業や個人事業主が、請求書発行を“毎月のルーチン”として抱えています。
しかしその中には、次のような非効率が隠れています。
よくある手動業務の流れ
- クライアントからメールで依頼を受け取る
- メール本文を見ながら請求内容をコピー
- freeeにログインして請求書を作成
- 日付・金額・品目を手入力
- PDFをダウンロードしてメール添付で送信
この一連の流れにかかる時間は1件あたり平均15〜20分。
月10件の請求があるだけで、3時間以上を手作業に費やすことになります。
さらに、
- 転記ミスによる金額誤り
- freeeへのログイン忘れ
- 締め日直前の焦り
といったヒューマンエラーも発生しやすくなります。
自動化で実現できる理想のフロー
このような課題を解決するために構築するのが、以下の自動化フローです。
Gmail受信 → スプレッドシート記録 → freee請求書発行
この流れをZapierで作ると、次のように動作します。
| 工程 | 自動化内容 | 担当ツール |
|---|---|---|
| ① メール受信 | 「請求書」など特定キーワードのメールをトリガーに検出 | Gmail |
| ② データ抽出 | メール本文から会社名・金額・日付などを自動取得 | Zapier(Formatter機能) |
| ③ スプレッドシート更新 | 受け取ったデータを一覧表に自動登録 | Google Sheets |
| ④ 請求書自動発行 | freee APIを通じて請求書を自動作成 | Zapier + freee |
この一連の処理を1つの「Zap」として組めば、
受信メールから請求書発行まで完全自動化が可能になります。
Zapierを使う理由:RPAよりも速く、安く、簡単
「自動化」と聞くと、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、Zapierには次のような利点があります。
🔹 Zapierの強み
- ノーコードで構築できる(プログラミング不要)
- ブラウザやアプリ操作を問わない(APIベースで安定)
- 月額費用が安い(無料〜3,000円程度で運用可能)
- Google・freeeなど主要サービスに対応済み
- AI(ChatGPT)連携も可能
特にfreeeはZapierとの連携APIが充実しており、
「請求書の作成」「顧客登録」「入金ステータスの変更」など、
バックオフィス業務の多くをZapierで制御できます。
自動化レシピの全体像
このレシピの全体構造は、以下のように3ステップで構成されています。
🧩 Step 1:トリガー設定(Gmail)
Zapierで「新しいメールを受信したとき(New Email)」をトリガーに設定します。
対象メールを絞り込むために、件名または本文に特定キーワード(例:「請求書」「発行依頼」)を指定します。
🧩 Step 2:データ処理(Formatter+Google Sheets)
受信したメール本文から必要な情報を抽出。
ZapierのFormatter機能を使って、
「金額」「日付」「会社名」などを整形してスプレッドシートに追記します。
🧩 Step 3:アクション設定(freee)
スプレッドシートの新規行をトリガーに、
freeeの「請求書を作成する」アクションを実行します。
これにより、シート上のデータをもとに自動で請求書が作成されます。
準備しておくもの(無料でOK)
このレシピを構築するために必要な環境は以下のとおりです。
| ツール | 必要用途 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Zapierアカウント | 自動化全体を制御 | 無料プラン可 | 有料は高速トリガー対応 |
| Gmailアカウント | メール受信トリガー | 無料 | Google Workspaceでも可 |
| Googleスプレッドシート | 請求データの保存 | 無料 | API連携が安定 |
| freee会計(またはfreee請求書) | 請求書作成 | 有料(法人プラン) | Zapier連携はビジネスプラン推奨 |
この中で最も重要なのはZapierとfreeeのAPI連携です。
freee側で発行される「APIトークン」をZapierに登録しておく必要があります。
Gmailの設定ポイント
自動化の精度を上げるために、Gmailでは以下の工夫を行います。
📧 件名・フィルターの工夫
- 件名に「請求書」「発行依頼」など共通ワードを使う
- ラベル「請求書依頼」を自動付与するフィルターを作成
- 添付ファイル付きメールは除外(freee側で発行するため)
Zapierでは、この「ラベル付きメールを検知」させる設定を行うと安定します。
Googleスプレッドシートの構成例
Zapierからfreeeに正しくデータを渡すためには、スプレッドシートの列設計が重要です。
| 列名 | 内容 | 入力例 |
|---|---|---|
| 日付 | 請求日 | 2025/04/30 |
| 顧客名 | 請求先 | 株式会社サンプル |
| 金額 | 税込金額 | 55,000 |
| 品目 | サービス内容 | コンサルティング費用 |
| メール | 送信元メールアドレス | info@sample.co.jp |
| ステータス | 自動記録用 | 処理中/完了 |
Zapierの「Formatter」機能で、
メール本文からこれらの情報を自動的に抽出・整形して入力します。
freeeの設定ポイント
freeeの請求書発行APIを利用するためには、
事前にfreeeの「API連携アプリ登録」と「認可トークン発行」を済ませておきます。
freee API登録手順(概要)
- freeeにログイン
- 開発者向けメニュー「API連携」へ
- 新しいアプリケーションを登録
- Zapier接続用のクライアントIDとシークレットを発行
- Zapierの「freee」接続設定で入力
これにより、Zapierがfreee請求書を自動発行できるようになります。
Zapierでのレシピ設定:基本構造
Zapierでは「Zap」という単位で自動化を作成します。
本レシピは次のような構造で設定します。
Trigger:Gmail → “New Email Matching Search”
↓
Action1:Formatter → “Text Extract / Split” で本文整形
↓
Action2:Google Sheets → “Create Spreadsheet Row”
↓
Action3:freee → “Create Invoice”
このZapを有効化すれば、メール受信と同時に請求書発行がスタートします。
Zapier設定の実例と画面イメージ
🔹 Step 1:Gmailトリガーの設定
- Zapierのダッシュボードで「Create Zap」をクリック
- トリガーアプリに「Gmail」を選択
- イベントで「New Email Matching Search」を選択
- 「Search String」に次のように入力:
label:請求書依頼 OR subject:請求書→ 「請求書依頼」ラベルが付いたメール、または件名に「請求書」が含まれるメールを検出。 - テストを実行して、最新メールが取得されることを確認。
💡 ポイント:
メール本文内に「金額」「社名」「件名」などが規則的に書かれていると後続のFormatterで抽出がスムーズになります。
🔹 Step 2:Formatter(データ整形)の設定
Zapierの「Formatter」アクションを追加して、メール本文を処理します。
- アクションに「Formatter by Zapier」を選択
- イベントは「Text → Extract Pattern」または「Split Text」
- 正規表現や区切り文字を使って項目を抽出
例:本文に以下のような内容がある場合
請求書の発行をお願いします。
取引先:株式会社サンプル
金額:55,000円
日付:2025/04/30
設定例(Extract Pattern)
| 項目 | 正規表現(Regex) |
|---|---|
| 顧客名 | 取引先:(.+) |
| 金額 | 金額:([0-9,]+) |
| 日付 | 日付:([0-9/]+) |
Formatterは上記パターンを自動認識して、それぞれの値を変数として抽出します。
🔹 Step 3:Googleスプレッドシートの更新
- アクションアプリに「Google Sheets」を選択
- イベント「Create Spreadsheet Row」を選択
- 対象スプレッドシートとシート名を指定
- 列名(例:日付/顧客名/金額/品目)にFormatter出力をマッピング
ZapierはGoogle認証を介してスプレッドシートに直接アクセスできるため、
メール→シート更新の連携は非常に安定しています。
💡 補足:
この段階でスプレッドシートを「請求データベース」として活用すれば、
freee以外の管理(入金状況や案件別集計)も自動反映できます。
🔹 Step 4:freee請求書を自動作成
- アクションアプリに「freee」を選択
- イベント「Create Invoice(請求書作成)」を選択
- 項目をGoogle Sheetsの値に紐づける
| freee項目 | スプレッドシート列 |
|---|---|
| 顧客名 | 顧客名 |
| 発行日 | 日付 |
| 金額(税込) | 金額 |
| 品目名 | サービス内容 |
| メモ | メール件名 or 備考欄 |
- テスト実行 → freeeに請求書が自動生成されていることを確認
ZapierはfreeeのAPIを利用するため、
ログイン画面を経由せず直接クラウド上で処理されます。
作成された請求書は、freeeのダッシュボードから即座に確認できます。
自動送付まで拡張する応用レシピ
ここまでで「請求書自動作成」は完了しました。
次は、「請求書をPDFで自動送信」する応用設定を追加してみましょう。
🔹 応用:PDF化+Gmail送信
Zapierには、freeeから直接PDFを添付するアクションはありません。
しかし次のような2段階構成で実現可能です。
- freeeで請求書URLを取得(Zapier内)
→ 請求書IDをもとにZapierで共有URLを作成。 - Gmailアクションで送信
→ クライアントのメールアドレスにURLまたはPDFを添付して送信。
Gmail送信テンプレート例:
件名:ご請求書の送付({{顧客名}}様)
本文:
{{顧客名}}様
いつもお世話になっております。
以下URLより{{日付}}分のご請求書をご確認ください。
{{請求書URL}}
よろしくお願いいたします。
この設定を追加すれば、請求メールも自動送信できるため、
メール受信→freee請求書発行→送信完了までが完全に無人化されます。
自動化のメリット:業務効率とミス削減の両立
| 項目 | 手動処理 | Zapier自動化後 |
|---|---|---|
| 1件あたりの処理時間 | 約15〜20分 | 約1分(自動) |
| 転記ミス | 発生しやすい | ほぼゼロ |
| 請求漏れ | 確認漏れリスクあり | 自動トリガーで防止 |
| 担当者負担 | 高い | 最小限 |
| freeeデータの整合性 | 手入力 | 一貫した自動登録 |
請求書発行のような「毎月繰り返す事務作業」こそ、
自動化による時間削減効果が最も大きい領域です。
特にフリーランスや小規模法人では、
「人件費を増やさずに事務処理を標準化」できる点が最大の魅力です。
トラブル防止のコツとエラー対処法
Zapierは非常に安定したプラットフォームですが、
設定次第ではエラーが発生する場合もあります。以下の対策を押さえておきましょう。
⚠️ よくあるエラーと対処法
| エラー内容 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| freeeに請求書が作成されない | API認証の期限切れ | Zapierのfreee接続を再認証 |
| 金額フィールドが空欄 | メール本文の抽出ミス | Formatterで区切り文字を再設定 |
| スプレッドシートに追記されない | 列名が変更された | Zapier設定内の列マッピングを更新 |
| Zapが途中で停止する | 無料プランの制限 | 有料プラン(Starter以上)に変更 |
Zapierには「Task History」機能があり、
どのステップで失敗したかを可視化できます。
これを活用して、失敗原因を1分で特定できます。
セキュリティと税務上の注意点
🔹 セキュリティ面
- freee連携時にはOAuth認証を利用し、APIキーを直接保存しない
- Gmail・Sheetsへのアクセス権は**最小限(必要なラベル・シートのみ)**に制限
- 業務委託先や外注先とはZapierアカウントを共有せず、「招待リンク」でアクセスを分離
🔹 税務・経理面
- 請求書データは電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要あり
- freee上で自動保存される請求書は法的に有効な電子データ
- Zapier経由で自動発行された請求書も、改ざん防止措置をfreeeが担保
この仕組みなら、電子帳簿保存法対応の自動化としても実務的に問題ありません。
応用アイデア:ChatGPTと組み合わせた自動化
ZapierはChatGPTとも連携できるため、
請求書コメントやメール本文の自動生成をAIに任せることも可能です。
例:ChatGPT + Zapier + freee
- 請求データをChatGPTに送信
- ChatGPTが自然な文体で請求メール文を作成
- Gmailで自動送信
これにより、単なる「自動発行」から「自動コミュニケーション」へと進化します。
AI+RPAの融合が、次世代のバックオフィス業務の形です。
まとめ:Zapierレシピで請求業務は完全自動化できる
今回の「Gmail→スプレッドシート→freee請求書」レシピを導入すれば、
請求業務を1日から1分に短縮できます。
- メールを受け取るだけで請求書が自動作成
- スプレッドシートに履歴が自動保存
- AIを組み合わせて請求メールも自動化
これらの仕組みは、一度設定すればずっと動き続ける「デジタル社員」です。
人が繰り返す作業をAIとZapierに任せ、
本来の経営・クリエイティブ業務に集中できる環境を整えましょう。

